持続可能性への技術革新 > リサイクル材料を使用した「トワロン®」
リサイクル材料を使用した「トワロン®」
テイジン・アラミド社は、リサイクル材料を使用した「トワロン®」の工業規模での試作生産に成功し、持続可能性への取り組みにおいて大きく前進しました。リサイクル原料から作ったこの高性能な長繊維は、「トワロン®」の代名詞である並外れた強度と耐久性も有しています。これは持続可能性に対して私たちが長年取り組んできた成果といえます。
大きな一歩
この開発は、当社がリサイクル原料の含有率をさらに高めることができたことを意味しています。今回の工業規模での試作生産の成功によって、より持続可能性を有する「トワロン®」の商業化にまた一歩近づきました。
2050年へのビジョン
再生可能原料で「トワロン®」を生産するという当社の高い目標は、アラミド業界において循環経済を促進する取り組みを強化しています。これは、2050年までに温室効果ガスの正味排出量をゼロにするという資源効率の高い経済を目指す欧州グリーンディールと同じ方向を向いています。 これまで当社は長年使用済みパラ系アラミド製品のメカニカルリサイクルに取り組んできましたが、この度の工業規模での試作生産の成功は、100%持続可能で循環型のアラミドバリューチェーンの実現という目標の達成に近づいたことを示しています。
持続可能性への技術革新 > タイヤ用途:「トワロン®」による循環型社会への貢献
タイヤ性能におけるアラミド繊維
タイヤの総重量において、アラミド繊維が占める割合は1%~3%程度ですが、性能向上においては重要な役割を果たしています。 主にトレッドの下のキャッププライで使用され、タイヤの均一性、寸法安定性および優れたハンドリング性能に貢献。理想的な高速走行や高負荷走行を実現し、タイヤ性能を大きく向上させます。また他にも、アラミド繊維を使用することにより1台あたり2g/kmのCO2排出量の削減や、転がり抵抗の低減といったメリットもあります。
循環性の実現
当社は20年以上にわたり、メカニカルリサイクルに取り組んでおり、製造過程で発生するアラミド繊維端材や、使用済みアラミド製品を「トワロン®」パルプにリサイクルしています。一方タイヤ用途では、使用済みタイヤからアラミド繊維を取り出す革新的な取り組みが実施されており、循環型社会を喫緊に確立しなければならないという当社の強い思いがあります。当社が目指すのは、単にCO2排出量の削減だけでなく、資源が再利用され続ける環境を実現することです。資源を消費してビジネス成長するのではなく、より持続可能な未来のビジネスモデルの実現に取り組んでいます。
持続可能なリサイクルの実現への協業
当社は、2050年までに再生可能原料に転換することを目指しています。再生可能原料とは、PETなどからのリサイクル原料や、バイオベースの代替品などです。この原料転換に向けた取り組みは、現在取り組んでいるフィジカルリサイクルとは異なるアプローチであり、未使用の石油資源への依存を減らし、より持続可能なタイヤ業界への道を開くことが期待されます。
アラミド材料を効果的にリサイクルするには、協業が不可欠です。まずリサイクルの前段階として、アラミド材料を回収し、分別、分離、洗浄します。3つのリサイクルルートのうちの1つを使って、使用済みアラミド材料の再利用を目指していますが、そこには数々の大きな課題の克服とイノベーション創出が必要です。
リサイクルにおける課題の克服
タイヤ内で使用されたアラミド繊維をリサイクルするには大きな課題がいくつも存在します。まず1つ目は、繊維製品に付着したゴム粒子の除去です。繊維とゴムは強固に接着されているため、取り出した繊維には他の成分や粒子が残存しているケースが多いです。
2つ目の課題は、タイヤ用途で使用される繊維製品の材料はナイロン、レーヨン、ポリエステルなど多岐にわたり、他の繊維に比べて使用量が少ないアラミド繊維を分離する工程が複雑になることです。
3つ目の課題は、リサイクル原料として要求される厳しい品質基準を満たすレベルまで、回収したアラミド繊維からすべての付着物質を効果的に除去することです。
持続可能性への技術革新 > 防護衣料用途:原着繊維による循環型社会への貢献
防護衣料用途:原着繊維による循環型社会への貢献
原液着色は単なる技術ではありません。防護衣料用途における、費用効率と染色堅牢性を高める手段です。またこの着色方法は、従来の染色方法と比較して、エネルギー消費量と水の使用量が少なく、CO2排出量が大幅に削減されることも特徴です。原液着色された繊維(原着繊維)を使用した衣料製品は、長期間色落ちしないだけでなく、耐久性も高まり、費用面でのメリットもあります。
顧客に選ばれる「コーネックス®」
「コーネックス®」は、品質や持続可能性を損なうことなく厳しい安全基準を満たそうとする顧客が求める繊維です。幅広い繊維タイプと原液着色によるカラーリングがあり、熱や炎、化学薬品への耐性が必要な防護衣料の材料として特に適しています。原着繊維は、衣料までの生産段階と、その衣料の使用期間の両面において持続可能性に関するさまざまな利点をもたらします。
原着繊維の利点
原着繊維の多くのメリットが生地メーカーから認められています。
- 染色工程が短縮される、または不要になるため、染色・仕上げに かかる費用を削減できる。
- 生産リードタイムを短縮できる。
- さまざまな繊維との相性がよいため、生地全体のコストダウンが 期待できる。
- 加工を極力抑えることで生地の品質と耐久性が向上するため、衣服が長持ちし、色を保持できる。
原着繊維は費用対効果が高く高品質であるだけでなく、生地製造工程の効率も高めます。また従来の染色工程を減らすことで、環境への影響を大幅に軽減できるうえ、この繊維は耐久性に優れ、色落ちしにくいため、衣服が長持ちし、エコロジカル・フットプリントも削減されます。
持続可能性への技術革新 > 防弾用途:リサイクル材料を使用した「トワロン®」製防弾ヘルメットによる循環型社会への貢献
防弾用途:リサイクル材料を使用した「トワロン®」製防弾ヘルメット による循環型社会への貢献
防弾用品においても持続可能で高品質な材料に対する需要が高まっています。当社はこれまで、環境への責任を負いつつ優れた保護性能を実現することは可能であると証明しようとしてきました。
その一環として、長年にわたり使用済みの防弾ベストをリサイクルしてきたほか、2023年には、Busch PROtective社(ドイツ)との協業により、リサイクル材料を使用した「トワロン®」プリプレグで製造した、史上初のヘルメットシェルを発表しました。
この用途で使用される材料には厳しい条件が求められますが、それをリサイクル材料を使用した「トワロン®」長繊維を用いて達成し、そして出来上がったヘルメットは多岐にわたるテストにより、通常の「トワロン®」製の製品と同じ高い基準を満たす優れた防弾性能を実証しました。
「私たちは、こうした開発の規模をさらに拡大するために、バリューチェーン内でパートナーとなる企業を継続的に探しています。高い防弾性能と信頼性と、防衛・セキュリティビジネスにおける循環性を高めることは同時に実現できると証明することを目指しています」
Martin Klang, Sales Account Manager - Ballistic Protection
持続可能性への技術革新 > 再生可能エネルギー用途:浮体式洋上風力発電における循環型社会への貢献
再生可能エネルギー用途:浮体式洋上風力発電における循環型社会への貢献
2023年、テイジン・アラミド社 とFibreMax社(オランダ)は、Just Transition Fund Groningen-Emmen(JTF)から400万ユーロの助成金を受けました。先進的な取り組みである浮体式洋上風力発電(洋上に浮かべた風車で行う風力発電)に関するFloating Windプロジェクトで使用します。その1つの取り組みとして、当社とFibreMax社は、循環型のアラミド繊維を使用したテンドン(緊張係留部)を開発しています。 この特別なテンドンは従来のスチール製ケーブルよりも高い持続可能性を有しており、風車と海底を繋ぎ固定するために使用され、再生可能エネルギーの利用推進の一助になることが期待されています。
洋上風力発電市場への新たな提案
浮体式洋上風力発電設備において最も重要な要素は、海洋での波や風から受ける荷重に耐える安定性ですが、アラミド繊維性のテンドン(FibreMax社独自のエンドレスワインディング技術を採用)は比類のない強度と耐久性を有しています。
この製品は、剛性と耐疲労性を特徴としており、浮体式洋上風力発電設備に必要な厳しい条件を満たすように特別に設計されています。Sander van Helvoort氏(FibreMax社 Director of Renewable Energy)は、「このテンドンは、従来難しかった深度60メートルを超える深い海域においても風力エネルギーの可能性を解き放つことができます」と強調しています。
よりグリーンな未来を実現していく
このプロジェクトは、市場に新たな技術提案をもたらすだけでなく、エネルギー転換の促進、労働市場の活性化、持続可能な取り組みの推奨という、当社全体で目指していることとも一致しています。また循環型のアラミド繊維を使用したテンドンは、当社が環境スチュワードシップに力を入れていることの表われです。オランダの社会雇用省(Ministry of Social Affairs and Employment)と経済気候政策省(Ministriy of Economic Affairs and Climate Policy)の承認を受けたFloating Windプロジェクトは、持続可能な未来に向けたビジョンを体現しています。JTFからの多大なる支援とFryslân(フリースラント)州からの追加支援を受け、当社は、再生可能エネルギーと持続可能性に関する開発に対して長期間にわたって貢献していく態勢が整っています。
持続可能性への技術革新 > 航空用途:航空貨物コンテナパネルのリサイクルによる循環型社会への貢献
航空用途:航空貨物コンテナパネルのリサイクルによる循環型社会への貢献
航空貨物コンテナパネルのリサイクルから始まったMACRO Industries社(アメリカ)およびKLMオランダ航空社(KLM)(オランダ)とのパートナーシップは、時が経つにつれ、多面的な協業へと成長しました。
使用済みコンテナパネルのリサイクル
KLMは、航空貨物コンテナパネルのリサイクルに協力してくれるパートナーを探していました。これらのパネルにはアラミド繊維が含まれており、私たちはぜひこの問題に取り組みたいと考えました。当社の研究開発センターで手作業でパネルを切り出すことから始まったこの取り組みは、その後、パネルからアラミド繊維製品を取り出して付着物質を除去することに成功しました。
安全性と持続可能性の向上
KLMと定期的にミーティングをする中で、特にリチウムイオン電池の輸送における安全性を共に懸念していることがわかり、自ずとコミュニケーションが発展していきました。 そして当社はMACRO Industries社と主材料に「トワロン®」を使用した耐火パネルを共同開発しました。これによって長時間火災を封じ込めることが可能になり、KLMのフライトの安全性が向上しました。
パネルの軽量化による大きな貢献
KLMとMACRO Industries社とのパイロットプロジェクトでは、「MACRO Lite panels」(MACRO Industries社製) の耐久性を実証しただけでなく、使用済みパネルのリサイクルを可能にすることで、KLMの持続可能性に関する目標の達成にも貢献しました。この提携はさらに、KLMのエアバスA320型機で「エンデュマックス®」製の軽量コンテナパネルを使用することでCO2排出量削減を目指す、別の重要なプロジェクトにもつながりました。「エンデュマックス®」は段階的に廃止されましたが、KLMは滞りなく切り替えることができました。