持続可能性への礎 > オランダにおけるテイジン・アラミド社のオペレーション
オランダにおけるテイジン・アラミド社のオペレーション
テイジン・アラミド社は、オランダのArnhem(アーネム)に本社を置き、Delfzijl(デルフザイル)とEmmen(エメン)に主要な生産拠点を保有しています。 当社の持続可能な未来の実現に向けた取り組みは、帝人株式会社(当社親会社)の統合報告書でも毎年ステークホルダーの皆さまに詳細をお伝えしております。
Delfzijl(デルフザイル)工場では、開発チーム、製造技術チーム、オペレーターチームが協力して主力製品「トワロン®」に不可欠なモノマーであるPPDとTDCを生産しています。 これらはクローズドプロセスで生成され、その後、反応して、アラミドポリマーであるポリパラフェニレンテレフタラミドを生成します。 また、この工場では溶剤を回収・再利用する施設も稼働しています。 ポリマーは乾燥後包装され、次の製造工程に向けてより大きなEmmen(エメン)工場へ出荷されます。
Emmen(エメン)工場は、世界最大のアラミド繊維の製造工場です。Delfzijl(デルフザイル)工場から送られてきたポリマーを溶解し、高度な製造プロセスを経て「トワロン®」繊維を製造しています。 製造された「トワロン®」繊維はお客さまの要望に応じて、さらにパルプ、撚糸製品、短繊維、表面処理品等といった繊維製品に加工して出荷されます。
持続可能性への礎 > パイオニアリング・サステナビリティ
パイオニアリング・サステナビリティ
当社は、持続可能な未来の実現に向けて取り組んでいます。 環境に与える影響をできる限り減らすことと、再生可能な炭素化合物を使ったアラミド繊維を開発することを目指しています。 その取り組みを成功させるカギは協業であり、サプライヤーやパートナー、顧客それぞれが持つ強みは、当社が目標を実現する上で極めて重要な役割を果たしています。
当社のサステナビリティ・ロードマップは、以下に挙げる4つの取り組みを通じ、バリューチェーン全体に貢献していきます。
- 製品の製造プロセスにおける環境への悪影響を及ぼす排出物の削減
- 製品使用段階におけるCO2排出量の削減
- 使用済みアラミド繊維製品を再利用するソリューションの開発(使用済みアラミド繊維製品を回収し、分離・洗浄の後、リサイクル原料として活用する)
- 再生可能原料の活用とリサイクル技術の向上
当社は、2050年の目標達成期限より早く循環型製品と再生可能エネルギーに転換することを目指しています。
持続可能性への礎 > 水の消費量と廃棄物
水の消費量と廃棄物
当社は、全工場で工業用水を使用しており、可能な限り使用した水を再利用することに務めています。ただその一方で、依然として真水の使用も一部の工程では不可欠であり、特に糸の洗浄工程でかなりの量が使われています。
各工場の水消費量はWater Consumption Index(WCI:水消費量指数)を使って表しています。この指数は、基準年の2005年と比較した、各工場で製造された製品1トンあたりの総水消費量を表しています。指数の数値が大きいほど、消費量が増加していることを意味します。
水の消費量に関するデータ
以下のグラフは、2010年から2023年までの3工場のWCIをまとめたものであり、すべての工場で水の消費量が減少しています。 最も大きく減少したのはEmmen(エメン)工場で、次いでDelfzijl(デルフザイル)工場でした。両工場ともに、この数年、WCIを改善しています。例えば、Delfzijl工場は改善プロジェクトにおいて使用する脱塩水の量を削減しました。
Delfzijl工場とEmmen工場では、引き続き工程の安定化が優先事項ですが、さらに2024年度は、水消費量の傾向を見える化し、さらに消費を抑えることに重点的に取り組んでいきます。
廃棄物
現在、各生産工程における原材料の使用状況を再評価しながら、循環経済モデルに移行しているところです。 石油化学製品などの石油由来の原料を段階的に廃止し、バイオ由来原料またはリサイクル原料を採用することを目指しています。 しかし、クローズドループの実現へさまざまな努力をしているにもかかわらず、生産工場では依然として廃棄物が発生しています。まず廃棄物は可能な限りリサイクルしています。また、リサイクルできない廃棄物は焼却し、熱エネルギーとして再利用しています。そして焼却できない残りの廃棄物について埋立地を使用しています。
埋立処分した廃棄物の増加
製造工程から発生した端材と、Delfzijl工場での火災により廃棄物が発生したため、埋め立て地の利用が増加しています。
リサイクルした廃棄物の増加
主にDelfzijl工場でリサイクル可能な廃棄物が発生したことにより、数量が増加しました。当社のリサイクルした廃棄物の数値には、後にRecovery Factory(回収工場)で処理された水とNMPを含んでいます。2019年から2022年にかけて、数々の処理上の問題により、これらの廃棄物は一時的に社外で保管されていました。これらは後に処理されましたが、社外保管時は廃棄物として記録することが規制で義務付けられました。その量(2019年6,479トン、2020年5,934トン、2021年3,479トン、2022年665トン)を除くと、当社のリサイクルした廃棄物の数量傾向は安定していることを示しています。
焼却処分した廃棄物の増加
特にDelfzijl工場では、火災の余波、そして生産停止や不安定な生産状況に起因する廃棄物の増加により、廃棄物の焼却が増えおり、Emmen(エメン)工場でも廃棄物の焼却が増えています。焼却量は、操業の安定性を高めることと、廃棄物のリサイクル性の向上を目的としたプロジェクトを進めることで減らせる可能性があります。
持続可能性への礎 > 排出
排出
水質汚染物質の排出に関するデータ
このデータは、2014年から2023年までのDelfzijl(デルフザイル)工場、Emmen(エメン)工場およびArnhem(アーネム)工場からの排出水について化学的酸素要求量(COD)、全窒素、N-メチルピロリドン (NMP)および硫酸塩の含有量をまとめたものです。2022年はArnhem工場でCODと全窒素が増加し、NMPの排出量はDelfzijl工場とArnhem工場で徐々に増加しています。CODと全窒素の排出量は、NMPの使用量と関連しています。
この課題に対処するため、Delfzijl工場とArnhem工場では複数のプロジェクトを実施してNMP排出量の削減を目指しており、すでにいくつかの対策と改善を実施しています。
こうした取り組みにより、2023年では、Delfzijl工場とArnhem工場におけるCODと全窒素の数値が低下しました。当社の製造工程では現在、高懸念物質(SVHC)に分類されるNMPの使用が必須ですが、実用的な代替案を求めて研究を続けています。
Arnhem工場では、NMPを含む廃水について生物処理を行なっています。非常に生分解性が高く、処理水中にNMPが検出されないことが、最近の研究で確認されました。
硫酸塩の排出量は、3か所の工場で定期的に監視しています。硫酸塩の排出量は変動しているものの、安全な環境を守るための許容限度を超えておらず、環境への悪影響はありません。
大気汚染物質の排出に関するデータ
当社は、事業と製品の持続可能性を高めるため、大気汚染物質排出量の削減に取り組んでおり、規制の強化や、監視と報告の厳格化を求める声にも後押しされています。
2023年までの排出量は全体として、いくつかの例外を除き、ほぼすべての物質において減少傾向にあります。ほとんどの排出量は減少しているか、増えている場合でもその量はごくわずかですが、2022年にN-メチルピロリドン(NMP)の排出量が急増しました。しかし、複数のプロジェクトを実施してその排出量を最小限に抑える取り組みをした結果、2023年は減少が確認できました。NMPの排出量をさらに削減するために、製造工程の改善を継続します。
クロロメタン、具体的にはテトラクロロメタンとジクロロメタンも、排出量をできる限り減らすことを目指して厳重に監視しています。この物質の排出量については法規制を強化する動きがあり、2024年からはさらに削減される見込みです。
フロン類については、2030年までに使用の段階的な廃止を求める法律がすでに施行されているため、期限が近づくにつれて排出量が削減されます。
持続可能性への礎 > 循環型の生産工程
さまざまなリサイクル技術への投資
現在のリサイクルルートの規模を拡大するため、研究と技術に投資しています。
ルート1:
20年以上にわたり、当社は、使用済みパラ系アラミド製品をパルプ状にリサイクルしてきた実績があります。メタ系アラミド繊維のメカニカルリサイクルの取り組みでは、回収した製品から取り出したアラミド原綿とオリジナル原綿を混ぜ合わせて、短繊維に再生することに注力しています。
ルート2:
当社の研究開発センターはリサイクル原料を使用し、再び「Twaron®」長繊維を生産する工業規模の試作生産に成功しました。現在は、商業生産に向けた取り組みを続けています。メタ系アラミド繊維においては、ラボレベルでのproof of principle(PoP:原理証明試験)を実施しています。
ルート3:
解重合等によるケミカルリサイクルでは、アラミドポリマー分子を基の化学構成要素(モノマー)に分解します。当社の重合工場にて、これらのモノマーを原料として、再びアラミドポリマーを生産することを目指し、この工程の開発に取り組んでいます。また、サプライヤーと共に、現在の原料の代替品となりうる再生可能な炭素化合物の使用も検討しています。最終的には、すべての石油由来資源の持続可能な資源への置き換えを目指しています。
持続可能性への礎 > 「トワロン®」のエコデータシート
「トワロン®」のエコデータシート
透明性の高いアラミド繊維のバリューチェーンを目指して
2021年、当社は「トワロン®」のエコデータシートを公表しました。このデータシートは、当社の製品・サービスが環境に与える影響をパートナーに説明するものです。エコデータシートには「トワロン®」のカーボンフットプリントの最新値がCO2換算で記載されているほか、製品のリサイクル性や、化学業界の規制など主要環境基準・アセスメントへの適合性に関する情報も記載されています。
持続可能性への礎 > EcoVadis社から「ゴールド」評価を獲得
EcoVadis社から「ゴールド」評価を獲得
当社は、EcoVadis社(フランス)のサステナビリティ評価において8年連続で「ゴールド」評価を受けました。
持続可能性への取り組みについて、全業種の企業を対象にした世界ランキングで上位5%に、合成繊維メーカーの世界ランキングでは上位3%に入りました。EcoVadis社からこのような素晴らしい評価を受けたことで、決意を新たに地球の健全化に取り組んでいきます。
Peter ter Horst
テイジン・アラミド社 CEO(帝人グループ執行役員、アラミド事業本部長)
「EcoVadis社のゴールド評価は、持続可能性と企業責任に対する私たちの揺るぎないコミットメントを裏付けるものです。また、テイジン・アラミド社がチーム一丸となって、環境への管理責任や倫理的慣行、社会的責任を事業のあらゆる面で実現すべく努力を続けていることを意味しています。私たちは今後も、未来に目を向けながら、循環型社会に大きな貢献をし、イノベーションを推進しながら当社のビジョンを共有するパートナーとの関係を育み続けることで、より持続可能な世界に向けて進んでまいります」
サステナブルな習慣を意識づける
環境保全への取り組みや倫理的習慣、労働習慣、そして人権における水準を継続的に向上させなければ、EcoVadis社の「ゴールド」評価を毎年受けることはできません。毎年同じ取り組みでは評価が下がるので、水準を高める為の継続的な取り組みが重要であり、サステナブルなビジネス習慣を推進し、グローバル市場にも影響を与えています。
サステナビリティに取り組む
今回の評価は、温室効果ガスの排出削減、アラミド繊維のリサイクルの促進、そして厳格な労働基準と人権基準の遵守に向けた取り組みが認められたものであり、このことにより、市場、特にサステナビリティへの取り組みを重視するパートナーや顧客、従業員にとって当社のプレゼンスがさらに高まるものと考えます。
今後の目標
この成果を励みに、環境や地域社会への貢献をさらに向上させるべく尽力していき、具体的には今後、グリーン生産技術への投資や再生可能エネルギーの使用量増加、地域社会とのさらなる深い連携に取り組みます。さらに、サプライヤーと緊密に連携することで、グローバルなサステナビリティ基準を上回る、持続可能で透明性の高いサプライチェーンの実現を目指します。
持続可能性への礎 > 持続可能な開発目標(SDGs)との連携
持続可能な開発目標(SDGs)との連携
持続可能性への礎 > 持続可能な社会において、ますます重要になる水素
持続可能な社会において、ますます重要になる水素
当社は、再生可能エネルギーを活用しながら、代替原料を探索し、循環性とネットゼロ(産業廃棄物ゼロかつCO2ニュートラル)の実現に向けて努力しています。その中で、既存の市場向けに持続可能な製品を開発する、水素など再生可能エネルギーの新たな用途を模索する、といった取り組みを実施しています。
水素:エネルギー転換のカギ
当社が属する帝人グループは、未来の社会への貢献を目指しており、水素をその重要な構成要素と考えています。水素、そしてアンモニアや合成燃料などの水素キャリアは、エネルギー転換の実現と地球温暖化対策に不可欠だからです。
これらのソリューションは、輸送や建設など変革が進んでいる分野におけるエネルギー利用(電力化)を推進します。また大学や研究機関、政治家、行政は水素の可能性を認識してエネルギー戦略に組み込んでおり、その競争力を高めるための助成やルール作りも進んでいます。
「トワロン®」:水素エコシステムを強化する
「トワロン®」は、水素エコシステムの厳しい条件のもとでも優れた性能を発揮し、安全性、耐久性、環境性能を向上させます。例えば、「トワロン®」で強化したガスケットは優れたシール性能を発揮し、長期にわたって耐薬品性を維持します。また、水素製造拠点と消費拠点を繋ぐパイプラインにおいて、「トワロン®」を使用した繊維補強熱可塑性パイプ(reinforced thermoplastic pipeline)は、堅牢で腐食しないため、スチール製パイプの代替品として、トータルコストと環境への影響を大幅に削減します。
未来の社会への取り組み
当社は保有するスルホン化技術を活かして、原料が入手しやすく、環境影響、製品の持続可能性の面で強みを持つ、燃料電池や電解装置向けの次世代プロトン交換膜材料の開発に取り組んでいます。こうした新たな用途へ当社の環境に貢献する素材を導入していくことで、持続可能な未来に貢献して世界の人々の生活の質を向上させていきます。